【迷宮在住の野良スライム、ひょんなことから新米冒険者の胸ポケットにお引っ越しする事になる。───スライムに生まれ変わった元勇者の僕が可愛い女の子冒険者に拾われちゃった!?表で可愛がられ裏では無双する充実のスライム生活が始まる!───(番外編おまけの△△視点)】
その②【ベルメリア】

木製の簡素なドアを開ける。
中に入ると大きなカウンターが中央にひとつ。手前には頑丈そうなテーブルが並べられていて、いくつかは食事をしている冒険者で埋まっている。
昼下がりの冒険者ギルドは、のんびりとした空気に包まれていた。
「こんにちは」
久しぶりに帰ってきたと感慨にふけりながら、カウンターの職員に挨拶をする。年若いお喋り好きな職員は、私に気付いて笑顔になった。
「こんにちは、ベルメリアさん!お久しぶりですね」
「ええ、久しぶり。さっそくだけど、薬草の買取をお願いしていいかしら」
「はい、薬草査定ならすぐに行えますよ、こちらへどうぞ」
「ありがとう」
買取専用のカウンターに案内されたので、そこでいくつかの薬草を出す。暇になる時間に来たのが良かったのか、すぐに査定は終了した。
「いつもながら貴重な薬草ばかりですね。個別に依頼が出されていた薬草もあったので、そちらは報酬を足しておきます」
「助かるわ」
はきはきとした受け答えに、相変わらずだと笑みを浮かべる。ここのギルドは小さいけれど、その分それぞれの依頼もしっかりと把握していて、きちんと買取に反映してくれる。
私はカウンターに置かれた金額を見て、ほんの少し目を開いた。
「…あら、予想よりも多いのね。もしかして薬草が不足している?」
「はい、そうなんです!」
首を傾げると、待ってましたとばかりにお喋り好きの職員は話し始めた。私としても、色々と離れていた間の事を聞きたかったのでちょうどいい。
昼下がりのギルドは閑散としていて人が少ない。安心して噂話に花を咲かせられるというものだ。
「今年はどうも不作らしくて、薬草関連の個別依頼が多く来ているんです。迷宮でなら手に入るかもしれないんですが、この辺りでは薬草採取専門の冒険者は少ないのであまり行きわたらなくて」
「あら、ごめんなさいね」
薬草専門の冒険者として活動している私には耳の痛い話だった。
別に責められている訳ではない事は分かっていたが、一応礼儀として謝っておいた。
「あ、いえいえ、ベルメリアさんは気にしないでください。冒険者は自由にギルドを移動できる権利を持ってるんですから。それに今回の買取でだいぶ個別依頼もさばけましたし、ほんと、ベルメリア様様ですよ!」
「まぁ、上手いんだから。でも、そうね。そういう事なら、もう少し薬草を出しておくわ。実はまた別の場所に行かなければならないの。そろそろ落ち着くと思うんだけど…」
「催促したみたいですみません。でもすごく助かります。あのぅ…エリク草があったりとかは…」
「今回はあまり手に入らなかったんだけど。うーん…。ひとつだけなら出せそうね」
「重ね重ね、すみません」
「いいのよ、次回は多めに採取できないか頑張ってみるわね。そうそう、何か私が離れていた間の面白いお話はない?」
「面白い話ですか?あ、とっておきのがありますよ!」
職員が待ってましたとばかりに話してくれる。それは近くのダンジョンで迷子になっていたペットスライムと、その子を保護した女の子の話だった。
飼い主を探しにギルドへ来て、その時に色々とあったらしい。
「……と、こんな感じです。ギルドはお祭り騒ぎでした」
「大変だったのねぇ」
とても興味深い、有意義な話を聞けた。私は満足してギルドを出ると、その足で昔なじみの家へと向かうことにした。
土で踏み固められただけの田舎道をゆっくりと歩く。この辺りの土地はとてものどかだけれど、知り合いの家に近づくとさらに時間がゆったりとなったような錯覚を覚える。
まばらに生えている野菜や薬草、それらを目で追いつつ、太陽が昇ってから時間が経った午後のカラリとした空気を楽しむ。
今から向かっている家の主は、遠い昔に同じ師匠に師事していた姉弟子だ。色々と事情があって、町の中ではなく町の外に居を構えている。
私が姉弟子の立場でも同じように町のはずれを選んだだろう。いい年をしてふらふらしている自覚があるけれど、終の棲家はこんなところが理想なのかもしれない。
そんな益体もない事を考えている内に、道の先にちんまりとした印象の家が見えてきた。全体的に可愛らしい作りだけれど、実際には意外と広くて快適なのを知っている。
柵を開けて庭に入ると、玄関扉の前でドアノッカーをコン、コン、と叩く。
「は、はいぃ!いま開けますっ」
すぐに返事があって、赤毛の少女が顔を出した。前に見た時と変わらず元気そうで、けれど以前にはいなかった小さなスライムを肩に乗せている。
「あれ、ベルメリアさん?」
「こんにちは、スレッタさん。近くに来れたから寄ってみたの。久しぶりね」
緑色のスライムは、私の様子をジッと伺っているようだ。ギルドで聞いた話が本当だったと知って、私は少し苦笑していた。
突然の来訪にもかかわらず、赤毛の少女は快く家に上げてくれた。私は魔法でさっと服と髪についていた埃を落として、彼女のあとについて行く。
その間も小さなスライムはジッと私の事を見ていた。私は普通の人とは色々と違うから、スライムの核を通すと何かおかしな風に見えるのかもしれない。
「そういえば、先輩は仕事中なの?」
「お母さんは、今は都会に行ってるんです。必要な薬草が足りないからって。でももうすぐ帰ってきます」
「まぁ、そうなの。必要な薬草って、もしかしてエリク草…?」
「そうです」
「ああ…、もう少し早く帰ってくるべきだったわ。ごめんなさいね」
上の子に必要だからと、姉弟子がエリク草を集めているのは知っていた。だから定期的に手に入れたエリク草をここへ売りに来ていたのだけれど、最近は色々とあって渡せなかったのだ。
鮮度が多少落ちてもいいから、加工したものを荷物として送るべきだったかもしれない。
反省していると、元気そうな様子の上の子がひょこりと顔を見せた。
「ベルメリアさん、こんにちは!久しぶりですね」
「エリクトさん、こんにちは。…元気そうでよかったわ」
「あ、スレッタから色々と聞きました?まだ薬のストックはあるんですよ。お母さんもスレッタも、心配しすぎなんですって」
ぷぅ、と頬を膨らます様子がいとけない少女のようで、とても愛されているのが伝わってくる。
「ふふっ」
この子たちと話していると、私も温かいもので満たされたような心地になる。
「じゃあ、今日は特別にお安くしておくから、ぜひ先輩たちの心配を減らしてあげてちょうだいね」
私は冗談めかしてそう言うと、よく似た2人の姉妹たちへ笑顔を浮かべた。
その日はとても充実した一日になった。迷宮で手に入れた薬草や魔物の素材を渡す代わりに、普通では手に入らない貴重な素材を手に入れたり、ギルドでは詳細が分からなかったスライムとの出会いの話も聞くことができた。
エリク草を手に入れようと、下の子が迷宮───それも若い女性が決して行くべきではない迷宮───を攻略しに行ったと聞いた時は天を仰いだものだが、ギルドで聞いた話だけでもある程度の予想はついていた。
「スレッタは無茶をし過ぎなんです。ベルメリアさんからも何か言ってやってくださいよ」
「お、お姉ちゃん…っ」
「そうね。迷宮では不測の事態が起こりやすいから、無事でよかったわ。迷宮の歩き方はコツがいるのよ。今の依頼が終わったらしばらくは暇になるから、よければ教えてあげましょうか?」
「え、いいんですかっ!?」
「もう、ベルメリアさんっ!」
「うふふ」
迷宮で生き残るには運も必要だ。装備も実力も経験も足りなくても、運だけで生き残る事もある。もちろん、その逆もある。
彼女が無事だったのは、早い段階でこの小さなスライムに出会えたからだ。私はこの場にいる誰よりも、それがどれだけ幸運だったのかを理解していた。
何故なら、小さなスライムを迷宮の隠し部屋で匿っていたのは、この私なのだ。
「…そう、それで元飼い主を探そうとして、ギルドでの決闘騒ぎになったのね」
「そうなんです!宝石を狙って、スライムの飼い主だって嘘をついたおバカさんがいたんだ!もちろんけちょんけちょんにしてやりましたよ、スレッタが」
「スレッタさん、強くなったのねぇ」
「えへへ」
「大騒ぎになったけど本当の飼い主は現れなくて…。だから家で引き続き面倒を見てるんです。ね、スレッタ」
「う、うん…」
上の子の言葉を聞いて、ほんの少し下の子の表情が曇ったような気がする。元の飼い主が現れたらスライムを返さなくてはいけないと思っているのだろう。
そんな心配は杞憂に過ぎない。私は彼女たちを安心させるために、スライムの魔力の流れを見るふりをした。
「そうね、見た所テイムはされていないから、そのまま飼い続けても問題ないと思うわ。スライムもスレッタさんにとても懐いているようだしね」
ついでに、会話の流れを変えてみる。
「名前はもうあるの?」
「すごい名前がついてますよ。スレッタ教えてあげなよ」
「えっと、えっとぉ。『エラン』って名前を付けたんです。異国の、勇者様の名前なんですよ」
「まぁ」
私はエランという名前を聞いて、驚きのあまり目を見開いた。そのままテーブルの上にいるスライムを見ると、嬉しそうにポンポンと飛び跳ねている。
スライム本人が、エランという名前を付けるように誘導したのだろうか?
それとも単なる偶然だろうか?
驚いている私に、上の子が面白そうに話しかけてくる。
「この子がそばにいると勇気が湧いてくるからだって。勇者って、そんな意味でしたっけ?」
「もう、お姉ちゃん」
「いいじゃない、素敵な名前よ。…とてもこの子に似合っているわ」
何にせよ、私が便宜上に付けた呼び名よりこのスライムに相応しい名前だ。
「エラン君、よろしくね」
私の言葉に、エランと名付けられたスライムは戸惑ったようにぷるんと震えた。
異国から連れられてきた、可哀そうな勇者の転生体。
『4号』。
これから先、私はこの子をそう呼ぶことはないだろう。
話は尽きる事無く、ありがたいことに夕飯までご馳走になってしまった。外を見ると、もうすっかり日は暮れている。
泊まればいい、と言ってくれる姉妹に首を振り、そろそろお暇しようと席を立つ。
「それじゃあまた。先輩によろしくね」
「はい、伝えておきます。貴重な薬草ありがとうございました!」
「あ、あの、また来てください」
小さなエランも警戒心を解いたようで、挨拶するようにポンと跳ねてくれる。
私は満ち足りた気分で2人の姉妹と一匹のスライムの姿を目に収めると、夜の帳の中へと進んで行った。
しばらく歩き、ある程度家から離れた所で呪文を唱える。対応した魔法陣へと跳ぶ移動魔法だ。
一瞬で視界は変わり、私の拠点のひとつである迷宮へとたどり着く。
「3号、いないの?」
生い茂る野草や薬草の間を縫うように歩いていく。以前来た時よりも薬草の数が多くなり、色つやも良くなっているように見える。
ここは通称『死なずの迷宮』と呼ばれ、命の危険が少なく安全に探索できる迷宮だった。ここに住んでいる魔物は迷宮の理に従い、生き物の血肉ではなく生気そのものを吸収するように改変される。
代わりに別の危険もあるのだが、それは仕方ない事だと割り切っている。目的の為の力を集めるためには、どうしても元となる何かが必要となってしまうのだから。
私はこの迷宮を自分の物として使っている。いわゆる迷宮の主だった。
迷宮は巨大な生き物だ。住みやすい場所を提供して、そこへやって来た魔物や冒険者を餌にして成長している。
どこかの学者が言うには、迷宮はスライムと同じ分類の魔物らしい。
現に迷宮には必ず核があり、迷宮が成長すると共に核も成長していく。
私はこの迷宮の核のありかを突き止め、私好みに改造していた。
血肉を奪わずに、生命力を奪うように。
奪った生命力を、『核』ではなく薬草の成長に使うように。
そうやって育てた様々な薬草を、私は自分の実験に使っている。
すべては『賢者の石』を生み出すためだった。
賢者の石は錬金術の最終目標と言われ、不老不死や死者蘇生、生命に関する事ならなんでも出来ると言われている秘宝だ。
私と姉弟子の師匠であるカルド先生が作り出そうとしていたものでもある。
それがあれば人々は平等に、私たち亜人でも平穏に暮らせると信じていたのだ。
けれど蓋を開けて見れば、私たちは迫害されただけで終わってしまった。
師匠は死に、姉弟子は命からがらこの地に逃げて、私もずいぶん長い間放浪した。
ベネリット国。人間至上主義の国で、何も知らない勇者を送り出した国。
私は賢者の石を作れたら、まずは自分の肉体を変えようと考えている。
先生が考えていたように完璧な人間になるのではない。遠い祖先である『淫魔』へと立ちのぼり、長い寿命と強い魔力を手に入れるのだ。
そうして永遠とも呼べるほどの長い時間を使い、好きなだけ実験を繰り返していく。その間にベネリット国の崩壊が見られたら、さぞ痛快な事だろう。
「3号、出てきなさい」
私の言葉に、転送魔法陣近くの地面がふるりと動いた。しばらく待っていると、地面はふるふると震え始め、やがて小さな黒いスライムが顔を出す。
【───しゅじんさま】
「ああ、3号。無事だったのね」
【───わかった、こわかった。しんじゃう、おもった】
「最近のあなたは調子に乗り過ぎだったからね。だから言ったでしょう。そろそろ痛い目を見るかもしれないって」
【───おうさま、くるなんて。しらなかった】
「おうさま?4号の事?」
【───がう、ちがうもん】
ぷん、とそっぽを向いて拗ねてしまった3号に、仕方ない子だとため息を吐く。
この子は自分の『本体核』の強化をせず、『補助核』ばかりを強化させていた。おかげで体は大きくなったけれど、肝心の中身は育っていないのだ。
「機嫌を直して。私の言いつけを守って偉かったわ。本体は決して表に出ないようにと、口酸っぱく言っていたものね」
【───】
「ほら、こっちにいらっしゃい。何があったか私に見せてちょうだい」
優しい声で誘うと、3号はこちらににゅるにゅると近づいてきた。不定形の体の中で、小指の先よりも小さな本体核がきらりときらめく。
差し出した手のひらに3号が乗ると、私は呪文を唱えながら額に3号の体をくっつけた。
流れ出してくる記憶。
設置した罠にかかった獲物を捕食しようと動き出す3号。
いつの間にか自由になっていた小さなスライムが、赤毛の少女を守ろうと反撃してくる。
最後には魔族化した小さなスライムによって、3号の持っているすべての補助核と体を吹き飛ばされ、映像はそこで途切れていた。
「驚いたわ…」
言葉通り、私はとても驚いていた。
小さなスライムが存在進化したことも驚いたけれど。
何よりも視覚的に強烈だったのは。
【───おうさま、まおうさま。ちいさな、まおうさま】
「そうね、魔王陛下そっくりだったわ」
魔王ケレス陛下と、勇者エランの転生体の姿がまったく同じように見えたからだ。
私はその後、勇者エランの転生体を匿っていた小部屋へと移動した。ここは物理的に繋がっている道もなく、他者が発動できる魔法陣も敷いていない、完全に独立した空間になる。
それなのに、彼…エランはどこから外に出たのか。それを確かめるために訪れた私の目に、思っても見なかった光景が映り込んできた。
「うそ、スレタ草がこんなに…」
溢れるほどの聖草の姿に、思わずこの場へ来た目的も忘れて見入ってしまう。
迷宮の力のほとんどを薬草の成長に注ぎ込むようになっても、一部の薬草は中々数を増やす事ができなかった。スレタ草などはその典型で、最低限の数を確保するので精一杯だった。なのに、目の前には数えきれないほどの勢いで豊かに生い茂っている。
これほどの数があれば、賢者の石を作り出す実験をいくらでも繰り返せるだろう。
「4…、エランのお陰なのかしら」
感動のあまり呆然としていると、3号が髪の中からびょんと飛び出て、壁のそばへにゅるにゅると進んでいった。
【───しゅじんさま。ごしゅじんさま。ここ、アナある。おくまで、つづいてる】
「…あな?ああ、壁の一部が壊れていたのね」
3号の言葉にハッとする。見ればほんの小さな隙間が空いていた。きっとエランはここから他の場所へ抜け出していたのだろう。
通常なら迷宮は壊れても半日程度で自然と自己修復するものだけれど、この迷宮は私が力の流れを改変してしまったので、傷の修復はどうしても遅くなりがちだった。後で迷宮の修復にも力を向けるよう、理を書き換えておいた方がいいかもしれない。
とりあえず、応急処置だけしておこう。私が壁の穴を魔法で塞いでいると、壁から離れた3号が今度はスレタ草へ近づいていった。
【───れ、これ。おいしいくさ。たべていい?】
「あなた、下にあるものはすべて食べ尽くしてしまったものね。仕方ないわ、少しだけならいいわよ」
許可すると、3号は嬉しそうにスレタ草に飛びついた。巨体だった頃ならともかく、手のひらより小さくなった今の3号なら食いつくされる心配はない。
私は焦ることなくしっかりと穴を修復したあとに、生い茂る聖草を魔法で回収し始めた。中にはエリク草の姿もあり、これも別に回収していく。
もちろん一部は残しておいて、また同じように増やせないか試してみるつもりだ。
一番手っ取り早いのはエランに協力してもらう事だけれど、ふと新しく思いついた事があった。
「3号、これもあげるわ」
私は聖草を食べ終わった3号に、姉弟子の家で手に入れたばかりの竜の鱗を差し出してみた。風竜ルブリスと、風竜エアリアルの2枚の鱗だ。貴重な素材だけれど、あの姉妹は快く薬草と交換してくれた。
不思議そうにしている3号に、まずはルブリスの鱗を食べさせてみる。するとまったく消化できないようで、3号は戸惑った様子をみせた。
【───べられない。たべられない。なんで?】
「竜の鱗だからね。ゆっくりでいいわよ」
通常のスライムなら消化に数か月はかかる代物だ。たとえ3号でも、数日から数週間はかかるだろう。
私はこの子を、以前よりも強く賢くなるように育て直そうと思っていた。そうしてあれほどの巨体になる前に、存在進化もさせてやりたいと思っていた。
その方が色々と都合がいいし、この子も迷宮の奥に押し込められるよりずっと楽しいはずだ。
「もう少ししたら、魔王陛下に献上する分の素材が溜まるの。そうしたら一緒に拝謁しに行きましょうか」
【───おうさま!まおうさま!おおきいおうさま、あえる!?】
「いい子にしてたら、会えるわよ」
【───いこ、いいこ、ぼく、いいこだもん!】
「そうね、あなたはとても良い子だわ」
今日一日でたくさんの可能性、たくさんの希望を見せられたからだろうか。
私はずいぶんと前向きに、すっきりと晴れやかな気分になっていた。